tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金利と為替レート:日本経済復活のカギ?

2016年10月08日 14時51分24秒 | 経済
金利と為替レート:日本経済復活のカギ?
 前回から金利の問題に為替レートの問題が加わってきました。実はこの2つは決定的に絡まりあって来ているからです。
 その関係で前回「プラザ合意」に触れました。 プラザ合意とは何だったのかは、十分ご承知の方も多いと思いますが、私なりの解釈は、下線部分のクリックでご覧いただけます。

 金利と為替レートの関係は、他の条件に変化がなければ、金利を上げれば為替レートは高くなるというものです。お金は金利の高い方に流れるからです。
 現に、アメリカの金利引き上げ予測のたびに、ドル高・円安になります。

 リーマンショックで世界中の銀行のバランスシートに大穴があいて、日本の銀行も苦労しました。しかし確かにバーナンキ流の異次元金融緩和で第一次大戦後のように、大恐慌や世界戦争に発展せずに済んだようです。
 勿論、金融政策だけでなく、社会政策の充実、国際的な理解と協調の賜物でしょう。

 さて、張本人のアメリカはどうかというと、世界の温かい見守りもあり何とか安定を取り戻し、ダウ平均も史上最高、万年経常赤字は変わりませんが、シェールオイルも出て、回復基調、いよいよ利上げという段階に来ています。

 しかし、利上げをすればドル高になり、国際競争力は弱まり、経済の回復力も弱まって、経常赤字はより深刻になるわけで、利上げをしてもドル高にならないようにと極めて慎重です。果たしどうなるか、初めての実験、お手並み拝見というところでしょう。

 では日本はどうでしょうか。日本はプラザ合意で為替レートを、1ドル240円から120円と2倍の円高にされ「失われた20年」を経験さらにリーマンショックで80円にされ、日本経済存亡の危機にありました。

 スティーグリッツも「1ドル80円じゃ無理だよ、少し円安介入したら」などとアドバイスをしてくれるほどでした。
 こうした環境の中で、通貨の番人日銀も、次第に円安転換の必要性を感じていたようです。そして白川総裁から黒田総裁に変わり、アメリカと同じ「異次元金融緩和」に踏み切りました。

 プラザ合意を決めたG5の国々も、日本の惨状を知って「1ドル80円は行き過ぎ、可哀相だ」という気持ちもあったのでしょう、国際投機資本も、そのあたりの雰囲気は察知していたのでしょうか、二回の異次元金融緩和で円は1ドル120円に戻しました。

 ここでは、金融緩和は、企業活動の潤滑油をしっかり注油して、企業活動をやり易くするというよりも、「為替レートを円安にする」という金融市場への働きかけとして使われたのです。そして、マネー資本主義の盛行の中で、それは成功しました。
 お蔭様で、安倍さんは「アベノミクス」大成功、ということが出来ました。

 しかし、残念ながら、その後のマイナス金利を含む第3次の金融市場への働きかけは 効果を示せませんでした。そして、経済成長率も物価も上がりません。
 アメリカの異次元金融緩和も、日本の場合も、非常事態の救済には役に立ったのでしょう、しかしそれ以上ではなかったようです。
 これはその後のアベノミクスが国民への働きかけ「一億層活躍」「働き方改革」などに注力していることからも見て取れます。

 繰り返して言えば、黒田日銀の2回の異次元金融緩和は、円高で動きの取れない日本の企業の「円高」という障害は取り除きました。しかしそれ以上のことはうまく出来ないようです。

 結局、金融緩和という政策は、潤滑油の供給という意味でも、また、(今日のマネー資本主義の中での)金融緩和と為替レート対策の組み合わせ政策の中でも、動かない機械を動くようにすることはできても、さらに機械の動きを積極的に活発化することはできないようです。

 こうして、おカネの動き、金融政策だけで、経済がどうにでもなるという考え方は、「やはり違うな」という事が見えてきたように思われます。
 経済は人間がお金を使ってやることですから、人間が何を考えるかで決まってくるのです。残念ながら、人間はおカネだけでは動かないという、ごく当たり前の所に帰って来ているのではないでしょうか。

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